脳みそ解放スナック「ですとろい」

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プロレスという生き方 - 平成のリングの主役たち/三田 佐代子

最近またプロレス人気が盛り返している。

小さいころ、1980年代はゴールデンタイムにテレビで試合を放送していた。スタン・ハンセン、タイガー・ジェット・シン長州力、藤波辰らが活躍し、女子プロレスもアイドル的な人気を博していた。プロレスが好きだった祖父がよく試合を見ていたので、なんとなく一緒になってみていた記憶がある。その影響か、大人になってからも深夜に放送しているワールドプロレスリングをよく見ているが、夜中ということもあってまったりと見ているため、選手や団体についてはあまり詳しくはなかった。

魅力的な選手や、インディーズ団体も増えてきており、もう少し詳しく知りたいと思い始めた矢先に見つけたのがこの本である。

著者の三田 佐代子さんはプロレス格闘技専門チャンネルのキャスターを務めている。プロレス・格闘技のキャスターになったきっかけが「古館伊知郎さんの事務所の人ならプロレスに詳しいフリーアナウンサーがいるだろう」という理由だったそうだが、現在では世界唯一の女性プロレスキャスターと言われている。

この本で紹介されている方の中で、特に印象に残ったのがDDT高木三四郎とタイで団体を立ち上げたさくらえみだ。この2人に共通しているのは、自ら団体を作り、経営するという起業家としての顔を持っているところである。

大学卒業後、イベント会社を立ち上げていた高木三四郎がプロレスを始めるきっかけとなったのが「屋台村プロレス」という屋台村での出し物の広報を担当したことだったそうだ。本業と掛け持ちしながら自らもレスラーとして参加するようになり、ついには団体を旗揚げする。当時はメジャー団体出身ではないレスラーが団体を作るということはなかったため苦労も多かったようだが、イベント会社経営で培ったノウハウを駆使し魅力的な人材を集めた結果が現在の成功につながっているのだろう。

また、居酒屋や接骨院なども経営し、欠場中の選手の生活保障やセカンドキャリアについても力を入れているというのも興味深い。「プロレス」という観点だけでなく、起業・経営という点でも面白く印象に残る内容だった。

柔軟な思考、という点でとても印象に残ったのがさくらえみだ。ケガで欠場中に所属団体が倒産してしまい、引退を考えていた時に近所の学校で募集していた生涯学習の講師となったのが転機となったそうだ。子供たちにプロレスを使った体操を教えるうちに、プロレスに興味がある人が意外といることに気づく。少年野球や少年サッカーのイメージで、体操に通う子供たちを集めた「我闘姑娘(がとうくーにゃん)」というプロレス団体を旗揚げし、子供たちにプロレスの楽しさを教えた。他にもリングを使わないプロレス「アイスリボン」やUstreamでの配信など斬新なアイデアを次々と出し、ついには海を渡ってタイ・バンコクで団体を作ってしまう。

プロレスファンにとっては、華やかで熱い試合とは違った面から、現在のプロレスを支える人々を知ることができる1冊となるだろう。また、プロレスにあまり興味がない人でも、仕事への姿勢や経営といったビジネス書として読むことができる1冊である。